5)木という自然素材 


① 無垢の杉のフローリング
② 法規制と木材使用、不燃
③ 自然素材の難しさ
④ 造作収納、建具、家具、シンボルツリー 





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① 無垢の杉のフローリング 
 無垢の木のフローリングにしたい、という希望はNPO法人i-net の理事長から
以前から聞いておりました。

無垢の木、杉材のフローリングは裸足に優しく、温かみがあって調湿作用もあり、
木の中でも柔らかい部類に
入ります。 

現在の一般的なフローリングというのは、木質調のシートプリントや、木材を薄く
カツラ剥きしたものを
貼り合わせている工業製品の類です。収縮もなく施工はしやすく、
耐薬品性もあり保育管理の面からはこれら工業製品のフローリングも悪くはない
かも知れません。 


 今回は、
『裸足保育』と聞き、私も迷わず無垢の杉材をお勧めしました。裸足には、
工業製品のフローリングは冷たい感触となってしまいます。

 

 又、i-net  さんは活動のお考えの中に地元密着があり、今回も当初は『千葉の杉で』
と要望してましたが、
最終的には『国産材』というこだわりだけ死守頂き、ある程度の量、
施工時期のタイミングよい納入、コスト、色合い、などから、九州産のフローリング
なりました。  

 

この九州産(熊本地域)のフローリングは、『気根』という芽の跡であるツブツブが
あるのが特徴の一つですが、それよりなにより、節有りも上小節の材ともに色合い、艶も
あり、とてもよい材が入ってきました。これも自然のモノを使っているので、巡り合わせで
しかないのですが、本当に良い材に恵まれました。

気根

 

 杉材は節の出方や色味によって随分と印象の変わる材です。
納入された杉材は、赤身(あかみ)と白太(しらた)、これらが
混じった源平が主です。
(基本は源平なのですが、赤身ばかりの材もあった)

敷き詰めた際に大きく色味が異なる事を避けるため、ある程度の仕分けを私の方で行い、
貼って頂く作業に
入ってもらいました 今回は広い場所ゆえ、材料を置くスペースも確保
できましたが、いつも上手くいくとは限りません。ある程度広い現場というのは、様々な
メリットがありますね。


 今回、気をつけたのは0-1歳の保育室には節を極力なくした『上小節』のものを、
もう一つの保育室とホールには『節有り』のタイプとしました。

 上小節は、無節のワンランク下で、最上級が無節となり、金額が高めの材です。
節が有るのが自然なのですが、
(節有りは安い!)節有りの場合、ところどころ埋め木で
死に節などを処理されていてちょっとしたクボミが出来る時もあり、そういう小さな穴を、
赤ちゃんはハイハイしながら、ホジホジしてしまうのでは?等と思い、赤ちゃんの部屋は

節の少ないフローリングとしました。

 腰壁は同じ九州産ですが、節が有る杉板材の為、全体の印象としてはどちらの保育室も
『節がある』印象に
なっています。 この節有りのイメージを理事長さんはお持ちだったので、
上手くイメージが合致して、良かったです。
 
18012901  保育室01 節なし


 

② 法規制と木材使用、不燃について

 今回の完成後、よく言われたのが、「思った以上にたくさん木を使えるんですね」という事。

 

そうなんです。法規を酷使して限度いっぱいまで使っています。 

どういうことかというと、内装制限や避難規定から、長押や付け柱の部位など、腰1.2mよりも上部の木材化粧材も場所によって、また条件によって使用可能となります。条件とは、1/10までの見付け見込み面積は除くという規定です(H12建告1439号ほか 『建築物の防火避難規定の解説』より)これらから詳細を計算して出しています。 

  

ムズカシイ話をしてしまいましたが、法規を守りつつ、木の内装は可能なのです。実際はコストや施工、様々な条件で難易度が上がってしまうのが実情ではありますが。。。 今回も、不燃の木材とそうでない材では、色や厚み、もちろんコストも変わってきており、部屋間で流用もできないですし現場は大変だったと思います。

 

 エントランスホールの出入口エリアの間接照明の天井部分は、不燃シートを木目柄にして
対応しました。

 

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③ 自然素材の難しさ

収納トビラや収納家具の大きさは様々なので、今回は杉の幅はぎ材や、クセのない
シナベニヤ材を、木質感の出具合、意匠の統一性、コスト面などから設定しました。
木の雰囲気は出したいが、無垢の木(集成材や幅はぎ材含め)を使うと色味や木が主張
しすぎてきて意匠性のコントロールなど難易度が高くなり、どうしてもゴチャゴチャ、
こってり、昭和風、まとまらないなど、好みが別れる結果となりがちです。

 今回は様々な事情で予めの仕様を詳細に渡り決定しにくかった事もあり、出来上がるまで

どのような空間全体の印象になるか、色味がどのあたりでまとまるか、など少し手探り
の部分もありました。自然素材を使っている為、これはいつもの事であり、ある意味面白い
部分でもありますが、空間イメージは少しの色の振れ幅でも大きく異なってくる場合があります。
出来ればあまりに異なるのは避けねばなりません。結果的には上手くまとまり、ほっとしています。

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④ 造作収納、建具、家具、シンボルツリー 

 今回はコストと睨めっこしながら、出来るだけ自然の材を使おうと努めました。

 

 

【造作収納】

 収納の記事と多少重なりますが、木のトビラやホールの収納側板などは 杉の幅ハギ材を
使っています。
収納があちこち点在するので、見た目の統一感を図りつつコスト面からも、
シナ合板を収納の引違戸に採用したり、見えない部分はポリ合板にしたり、など、ややこしい
依頼に対して、スムーズに対応してもらいました。
 

 

【建具】

 杉の集成材を框(タテヨコの材)に使って、木の質感が出た作りになっています。 

一般的には建具は既製品を使い、木質シート製が多いのですが、引戸の納まり箇所が複雑
だったり、幅員がシビアに
必要、カギの取付位置や指の挟みこみ防止の対応など、特注要因が
多く、既製品の特注対応よりも一から作った方が良いように思い、造作しました。 
 ガラスの上部と腰下は、壁面の杉の腰板と合わせてもらう事や、ガラス窓からちょっとだけ
子供がのぞける高さにする等、細部にわたって対応していただく事ができました。
 (ガラスはもちろん飛散防止フィルム貼り)

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【家具】

 子どもの日常使いのロッカーや玄関の下駄箱など、造り付けで製作してます。
杉の幅ハギ材を使い、塗装はウレタンクリア塗装。 

 保育室内の収納ロッカーなどは永久固定ではなく、移動可能も視野にいれたボルト固定で対応

しています。
 

 i-netさんからの要望で私が驚いたのは、ロッカーなど保育スペースの家具は時期や状況によって
移動する、ので、取り外し可能なようにしてください、という事。

 子ども達の状況は、春の入った頃と冬や年明けて半年以上経つと、成長の変化もあり、色々な状況で、
ゾーン分け保育など
『最適なレイアウト』も変化するそうです。よって、レイアウト変更も、状況に
応じて行っているそうです。
 
 子どもの成長や様子を細やかに見たり寄り添うゆえ、子どもの力を引き出そうとするゆえ、なんだと
私は深く印象に残っています。私が普段から設計とは別に活動している『防災時の家具転倒防止』の活動でも、『暮らしの変化や身体の変化に応じて、室内を見直し、レイアウトを適宜最適化していこう』、と話をしているので、通じるものがあるなぁと感じ入りました。

 

 手洗いの横には、ロッカーと同じ杉材で、ダストボックスを造作しています。
手を拭いたミニタオルやペーパータオルをポイっとする為で、中にボックスを入れて使うことを
想定しています。 
 ちょっとしたことですが、このような備品にもこだわる事で、モノを丁寧にしようという気持ちが
育まれるように思いました。 


ダストボックス造作


【シンボルツリー】

 このシンボルツリーは、i-netさんから『自然とのふれあいを通じて健やかな成長を願う』という
理念を聞き、
私の方から提案し、何とか実現しました。 
 現場に納入されたヒノキの枝付き丸太(京都産)は予定よりも大き目で、存在感バッチリ。
『木』を知らない子供達には身近に触れる『自然』として、又、季節の飾りつけを行うことで、
年間を通じて活躍してくれる事となるでしょう。天井裏には上棟の御札も祀り、園を静かに
見守ってくれる主となってくれることでしょう。
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最後までお読み頂き、有難うございました★


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