こどものじかん保育園 設計の話
6) 収納について 

 ① トビラを木の仕様にするという事
 ② 収納スペースを確保する難しさ

 ③ 収納スペースの配置と出し入れ  【吊戸棚について】 

 ④ 収納棚の中にコンセントを

  

DSC04026 (2)


 

【① トビラを木の仕様に 】

 収納スペースをあちこち沢山確保することは、そのトビラや棚板などが沢山見えてくることに
なります。収納のトビラを全て木の仕様にするかどうか、どのような木(木目柄)にするかは、
空間全体の印象イメージに大きく関わってきます。 
 腰壁まで杉板の為、一様に、「統一感のために」杉板を使うのが良いかどうか、全体のまとまりや
印象イメージ、色味やコストなど勘案して決めていくことになります。

 

 日常使う、子どもたちのロッカーは今回『杉の幅ハギ材』で製作してもらいました。
収納家具や備品を木材仕様で揃えると、室内の印象=インテリアとしての『木質感』や
『木の素材感』は格段にアップしていきます。 

 

 無垢の木や集成材、幅はぎ材ではなく、木質シート(一般の人はこれらも『木』だというが)
だと均質感、統一感が勝りすぎて、他の部位の自然素材と並べると違和感があります。
木質シートは柄にもよりますが、すっきりモダンな印象、都会的・大人な印象となる為、
今回は極力避けつつ、コスト面から見えない部分や優先順位の低いエリアから採用していきました。 

 

 

【② 収納スペースを確保する難しさ】

 収納スペースの確保については住宅に限らず保育園も出来るだけ沢山欲しいというのは
例外ではありません。 
消費ストック品だけでなく、季節ごとの行事や活動に関するモノ、
日常の活動に関するモノ(EX.画用紙など)など、実に様々あります。もちろんオモチャや
コット(布団類)など毎日子供達も一緒に出し入れするモノなど、大きな収納から小さな
適材適所の収納場所確保
など、検討事項は多くあり、何度も打ち合わせを重ねました。

 

 保育園として申請していく中で、『保育有効面積』が有り、収納や置き家具などを省いた、
又、巾木などの
壁面の厚みを除いた内法(うちのり)の面積が保育人数との関係で確保必要に
なってきます。

 

 子どもの動き回る空間を純粋に確保しようとする為なので、子どもの為に良い事ではあり
ます。しかしながら、
保育の運用やより良い環境のために(すっきりした空間やお片付けの
習慣育成など)収納スペースを確保しようとすれば、限られた全体面積の中から、保育面積
を削る事=保育収容人数が減る、ような事も検討する事になってしまいます。。。

もちろん、保育面積は運用上、確保したい人数から決まってはくるのですが、余りにも収納
スペースが少ない空間だと、実際の保育の環境、労働側の環境を想像すると不安
になるのも
確かです。

 

 今回の場合も、保育人数は増やしたいが単に詰め込むのではなく環境整備(収納など)との
バランスを見ながら、
様々な細部を決めていったという経緯があります。 

 

保育の運用面やモノを頻繁に買い換えられない事を考慮すると、ある程度の収納スペース
確保は必須であるにも
関わらず、その為の補助や施策、もちろん法規的な基準などは有りません。
法規的に定める事でもないですが、実際の運用上、モノが溢れ保育スペースを侵食してしまって
いるような都会の保育園を想像したり、保育士たちが毎度毎度、行事のためのモノを作っては
収納スペースが無い為に捨てざるを得ないような事があるとしたら、

収納スペースの確保をもう少し出来るような支援が何かないものか、と思う次第であります。

(1㎡以上の空間には消防上、感知器が必須となる。これは致し方ない・・・)

 

 

【③ 収納スペースの配置と出し入れ 】

  【吊戸棚について】

 先に書いたように、保育有効面積に置き家具など収納に関する部分は面積カウント除外だが、
吊戸棚は規定を守れば設置OKではあります。よって吊戸棚を沢山つける事になるのが、
今の一般的な保育園の収納事情・・・

 

 今回は、ある程度の収納スペースが確保できたこともあり、吊戸棚は最小限に留めました

 

この建物は免振構造ゆえ、揺れは普通の建物に比べ、格段に少ないと想定されますが、全く揺れない
ということでは地震想定の面からはあり得無いのです。
 よって、空間上部にある収納トビラは、引違いにしたり、開きトビラは常にラッチが掛かるタイプにしています。揺れにより感知して閉まるタイプは、揺れにより感知しない場合も有りうるので、より安全な方式を採用しました。 

 

 吊戸棚のような高いところの収納は、保育士さん達の身長によって使い勝手に影響してきます。

住宅のキッチンなど近年は吊戸棚は作らない傾向だったり、下部に収納家具をビルトインする場合に
限って吊戸棚だけ予め造っておく、というケースが多く、あるいは上から下まで収納造作の場合などが増えつつあります。

 

吊戸棚に入れてしまうと日常的な取り出しが不便となり、使わなくなるケースが多く、年に1、

2回のモノをしまう場所で奥行きも深くは取れない。よって収納するモノが限られてしまう、使わなくなる、といった、死蔵品ルートをたどることになってしまいます。

 

吊戸棚に入ったモノが死蔵品(仕舞ったら取り出さないモノ)になってしまわないように、

常に中身を見直し活性化させる事と、『どこでもよいので吊戸棚で収納確保』という考えを改め
『使える収納』を作る事が大切といえるでしょう。 

 吊戸棚以外の様々な工夫などは又、別に記事にアップしますね。。

DSC04238 (2)




 

【④ 収納棚の中にコンセント設置 】

 今は、スマホやi-padなどのモバイルで様々な事ができるようになっているので、
収納のカウンタースペースには、それらを置くスペースと共に電源を確保しています。 

 また、来客など朝夕の時間以外の玄関対応などを事務室だけでなく保育士も場合によっては
対応可能なように、モバイルなど電化製品、通信機器の適材適所への対応は必須となってきます。

 

今回の造作家具へのコンセント埋め込みは、多少の?いやちょっとした手間ではあるけれど、
タコ足配線やコードがあちこちに伸びている状況はよろしくないのは明らかなので、ビルトイン
として設置してもらいました。

 

今回は一つづつの収納スペースの内容をある程度想定しながら検討・設計を進めました。全てにコストという条件は掛かってくるので、不要な収納や過度な費用はかけたくないのは、当然の事です。

 

 

収納については様々な工夫や伝えたい事はあるのですが、際限ないのでこの辺で・・・

繰り返しになりますが、収納スペースを工夫したり上手く確保する事は、
子ども達の保育環境や成育上、又、保育士さん達や運営側の視点からも、必須の事と言えましょう。



最後までお読み頂き、有難うございました。
次の記事:こどものじかん保育園 設計の話 7)水廻り 8)その他